「空き家 放置 どうなる」で検索して、このページにたどり着いた方が多いと思います。
正直に言うと、この分野は最初のとっつきが本当に悪いです。調べ始めると「特定空家等」「住宅用地特例」「課税標準」「行政代執行」といった言葉が次々に出てきて、しかもどのサイトも、それらの言葉を知っている前提で書かれています。ひとつ調べると知らない言葉が二つ増える、という状態になりがちです。
この記事は、その順番を逆にしました。難しい言葉が出てくるたびに、そこで立ち止まって意味を説明します。 遠回りに見えるかもしれませんが、結局これが一番早いです。
先に結論だけ言っておきます。空き家は、持っているだけなら税金は変わりません。変わるのは、役所から「勧告」という通知を受け取ったときです。 そこに至るまでには段階があって、途中で対応すれば何も起きません。この一文の意味が最後まで読むと分かるように書きました。

まず、いちばん誤解されているところから
「空き家になると固定資産税が6倍になる」。この話、聞いたことがある方は多いと思います。
これは半分正しくて、半分間違っています。正確に言うとこうです。
空き家になっただけでは、税金は1円も変わりません。
役所が手続きを踏んで「勧告」という段階まで進んだとき、土地の税金の計算方法が切り替わります。
つまり、間に「役所の手続き」というワンクッションがあるんです。ここを飛ばして「空き家=増税」と覚えてしまうと、慌てなくていいところで慌てて、逆に対応すべきタイミングを逃します。
では、その手続きとは何なのか。ここから順番にほどいていきます。
ことばをほどく①:「特定空家等」と「管理不全空家等」
空き家の話には、空家等対策の推進に関する特別措置法という法律が関わってきます。長いので、この記事では以下「空家法」と呼びます。
この法律は、問題のある空き家を2つに区分しています。名前が似ていて紛らわしいのですが、違いは「深刻さの段階」です。
特定空家等(とくていあきやとう)
すでに危ない状態になっている空き家のことです。次の4つのうち、どれかに当てはまるものが対象とされています。
- 倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
条文の言い回しなので固いですが、要するに「倒れそう」「不衛生」「見た目がひどい」「その他、近所に迷惑がかかっている」の4つです。
ポイントは、4つとも「著しく」が付いていることです。誰も住んでいないというだけでは当てはまりません。判断するのは市区町村です。
管理不全空家等(かんりふぜんあきやとう)
「このままだと特定空家等になりそう」という手前の段階です。2023年12月13日に施行された法改正で新しく作られた区分です。
なぜこれが新設されたのか。改正前は、空き家が「著しく」危険な状態になるまで役所が動けませんでした。そこまで傷んでからでは、直すにも壊すにも費用がかさみます。それなら、その手前で声をかけられるようにしよう、というのが改正の趣旨です。
| 区分 | どういう状態か | いつからある区分か |
|---|---|---|
| 管理不全空家等 | 放置を続けると特定空家等になるおそれがある | 2023年12月13日施行の改正で新設 |
| 特定空家等 | 上の4つの状態のいずれかに当てはまる | 2015年の法施行当初から |
ここが重要なのですが、後で説明する税金の話は、手前の「管理不全空家等」でも適用されます。 「特定空家になるまでは大丈夫」という理解は、2023年の改正以降は通用しません。この記事を書くにあたって調べていて、いちばん認識を改めたのがこの点でした。
ことばをほどく②:役所の手続きは4段階ある

さて、「勧告」です。これが何なのかを説明します。
役所はいきなり最終手段を取るわけではありません。段階を踏みます。
| 段階 | やられること | 強制力 | この段階で起きること |
|---|---|---|---|
| 1. 助言・指導 | 「直してください」という働きかけ | なし | 罰則なし。まずはこれが届く |
| 2. 勧告 | 直すべき内容と期限を示される | なし(行政指導) | 土地の税金の軽減が外れる |
| 3. 命令 | 法的に義務づけられる | あり | 従わないと50万円以下の過料 |
| 4. 行政代執行 | 役所が代わりにやる | あり | かかった費用は全額請求される |
いくつか、聞き慣れない言葉があると思います。
過料(かりょう)
罰金と似ていますが、別のものです。罰金は刑罰なので前科が付きますが、過料は行政上のペナルティで前科は付きません。ただしお金を払う点は同じです。
行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)
所有者がやらないので、役所が代わりに工事などを行うことです。「役所がやってくれる」わけではありません。費用は後から所有者に請求されます。 解体工事なら、その金額がそのまま請求書になります。
なお、倒壊の危険が差し迫っている場合には、事前の手続きを省いて執行できる「緊急代執行」という仕組みも用意されています。
分かれ目は2段階目です
この表で、いちばん大事なのは2段階目の「勧告」です。
勧告そのものには強制力がありません。「勧告されただけなら平気」と思ってしまいそうですが、逆です。勧告を受けた時点で、税金の計算方法が切り替わります。
裏を返せば、1段階目の助言・指導のうちに対応すれば、税金は変わりません。役所から封筒が届いたときが、お金をかけずに済ませられる最後のタイミングということです。
もし今、心当たりのある通知が手元にある方は、開封して段階を確認してみてください。
ことばをほどく③:「住宅用地特例」と「課税標準」
では、勧告を受けると税金がどう変わるのか。ここで2つ、言葉を覚える必要があります。
課税標準(かぜいひょうじゅん)
税率をかける前の金額のことです。税金は「課税標準 × 税率」で決まります。土地の値段そのものではなく、計算の元になる金額だと思ってください。
住宅用地特例(じゅうたくようちとくれい)
住宅が建っている土地は、この課税標準を大幅に下げてもらえる、という制度です。住まいにかかる税負担を軽くするための仕組みです。
具体的にどれくらい下がるのか、割合はこう決まっています。
| 土地の区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |

6分の1です。かなり大きい優遇です。
そして、この特例が適用される条件は「住宅が建っていること」です。ここから2つのことが導けます。
ひとつ目。建物を壊して更地にすると、この特例は外れます。「空き家を解体すると税金が上がる」と言われるのは、これが理由です。
ふたつ目。2023年の改正で、特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けた土地も、この特例から除外されるようになりました。建物が建ったままでも外れる、というのが改正の要点です。
「6倍」の正体
課税標準が6分の1から1に戻る。だから「6倍」と言われます。仕組みとしてはその通りです。
ただし、実際の納税通知書の金額がそのまま6倍になるとは限りません。 理由は2つあります。
ひとつは、土地の固定資産税には税負担が急に跳ね上がらないようにする「負担調整措置」という仕組みが組み込まれていること。もうひとつは、特例が外れるのは土地の分だけで、建物にかかっている分は変わらないことです。
自治体の解説でも、実際の増え方は3倍程度と説明されている例があります。ただし土地の評価額、面積、地域、建物の状態によって結果は変わります。自分の土地が実際いくらになるのかは、市区町村の資産税の窓口で確認してください。 課税明細書を持っていけば話が早いです。
ここまでを整理すると、こうなります。
| よく見かける説明 | 実際のところ |
|---|---|
| 空き家になったら税金が上がる | 空き家であること自体では変わらない |
| 特定空家に指定されたら上がる | 変わるのは「勧告」を受けた時点 |
| 税額が6倍になる | 土地の課税標準の話。実際の増え方はこれより小さいことが多い |
| 管理不全空家なら影響はない | 管理不全空家等でも勧告を受ければ外れる |
税金の取り扱いは個別の事情によって結果が変わります。実際の判断にあたっては税理士など専門家に確認してください。
税金より怖いかもしれない話
正直なところ、調べていて背筋が寒くなったのは税金ではなく、こちらでした。
建物が誰かに損害を与えたとき
民法には、建物や塀などの工作物の設置や保存に欠陥があって他人に損害が生じた場合の責任について定めがあります。まず占有者、次いで所有者が責任を負う構造です。
そして所有者の責任は、占有者と違って「きちんと注意していました」という理由では免れられない仕組みになっています。
つまり、住んでいないことも、遠方に住んでいることも、責任を軽くする理由にはなりません。 屋根材が飛んで通行人に当たった、ブロック塀が倒れた、伸びた枝が隣家の車を傷つけた。こうした場面は、すべてこの枠組みで問題になり得ます。
「誰も住んでいないんだから、うちには関係ない」は通じない、ということです。ここは知っておいたほうがいいと思います。
火災保険が効かないことがある
もうひとつ、見落としやすいのがこれです。
火災保険は、建物の使い方によって扱いが変わります。人が住んでいない建物は、住宅用の契約の対象から外れる場合があります。引き受けの条件や保険料が、住んでいたときと同じにはならないことがあるということです。
もし契約中の火災保険があるなら、空き家になった時点で保険会社に使用状況を伝えて、契約が今も有効かを確認してください。 伝えていないと、いざというときに支払いの対象にならない可能性があります。手続き自体は電話一本で始められます。
苦情は役所より先に来る
草が伸びる、虫や小動物が出る、ゴミを捨てられる、知らない人が出入りする。こうした問題は、役所の手続きが始まるより先に、近所からの苦情という形で表に出ます。
というより、役所が空き家の存在を知るきっかけの多くは、近隣からの通報です。順番としては、近所 → 役所 → 通知、という流れになります。
相続した家には「期限」がある

ここからは、相続で引き継いだ空き家に限った話です。通常の空き家との最大の違いは、何もしないでいるだけで過ぎていく期限があることです。
相続登記をしないと過料の対象になります
まず言葉から。
相続登記(そうぞくとうき)
亡くなった方の名義になっている不動産を、相続した人の名義に書き換える手続きです。法務局で行います。
これが2024年4月1日から義務になりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2024年4月1日 |
| 期限 | 相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内 |
| 遺産分割が成立した場合 | 成立した日から3年以内に、その内容の登記を申請 |
| 施行日より前に起きた相続 | 2027年3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降ならその日から3年以内) |
| 怠った場合 | 正当な理由がないときは10万円以下の過料 |
4行目を見てください。ここが一番の注意点です。
この義務は、施行日より前に起きた相続にも適用されます。何年も前に相続して、名義を変えないまま放置している家がある場合、期限は2027年3月31日です。 「昔の相続だから関係ない」ではありません。
遺産分割の話し合いがまとまらず期限に間に合いそうにない場合のために、「相続人申告登記」という簡易な手続きも用意されています。ただしこれは基本の義務を果たすためのもので、後から遺産分割が成立したら、あらためて登記の申請が必要になります。
登記や相続手続きの具体的な進め方は、司法書士など専門家に確認してください。自分でできる部分もありますが、共有者が多い場合や関係が複雑な場合は、早めに相談したほうが結果的に安く済むことが多いです。
相続した実家を売るところまでの手順と、期限どうしがぶつかる場面については、別の記事で整理しました。

売るときに使える控除にも期限があります
相続した空き家を売る場合、条件を満たすと税金が軽くなる制度があります。国税庁が示している主な要件は次のとおりです。
譲渡所得(じょうとしょとく)
不動産を売って出た利益のことです。売った金額そのものではなく、そこから買ったときの費用や経費を引いた残りに税金がかかります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる売却 | 2016年4月1日から2027年12月31日までの売却 |
| 控除額 | 最高3,000万円 |
| 控除額の例外 | 2024年1月1日以後の譲渡で、相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合は最高2,000万円 |
| 家屋の建築時期 | 1981年5月31日以前に建築されたもの |
| 売却の期限 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却代金 | 1億円以下 |
| 建物の状態 | 一定の耐震基準に適合するか、取り壊して売却すること |
最後の行には2024年以降の売却に適用される緩和があって、売却の時から売却した日の属する年の翌年2月15日までの間に耐震基準を満たすか、家屋を全部取り壊した場合も対象とされています。
放置との関係で効いてくるのは5行目です。「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限は、何もしなくても勝手に過ぎていきます。 過ぎたら、この控除は使えません。
要件の判定は個別性が高いので、自分のケースで使えるかどうかは税理士など専門家に確認してください。
なお、親がまだ存命で実家が空き家になっている場合は、相続を待たずに選べる手段があります。親が売るか、相続してから売るかで手続きも使える制度も期限もまったく変わるので、別の記事で整理しました。

結局、どうすればいいのか
選べる方向は3つです。
| 選択肢 | 向いているケース | かかるお金 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 売る | 使う予定がなく、維持の負担を止めたい | 仲介手数料、譲渡所得の税金 | 相続なら控除の期限がある |
| 貸す | 立地が良く、直せば貸せる状態 | 修繕費、管理委託費 | 借り手が付かない期間の負担 |
| 持ったまま管理する | 将来使うかもしれない、まだ決められない | 管理委託費、固定資産税、保険料 | 管理をやめると勧告の対象になり得る |
3つ目を選ぶとき、「持っている」と「放置している」はまったく別物です。 ここは強調しておきたいところです。
定期的に窓を開けて風を通す、水道を流す、庭木を切る、郵便物を片づける。これを続けていれば、管理不全空家等には当てはまりにくくなります。遠くて自分では通えない場合、空き家の管理を代行してくれるサービスもあります。
売却を考えるなら、まず値段の目安を知るところからです。複数の不動産会社に査定を依頼して比べる方法が一般的ですが、ひとつ注意があります。査定額は不動産会社が「これくらいで売れそうです」と出した見込みの数字で、売却価格を保証するものではありません。 実際にいくらで売れるかは、買主との交渉や、そのときの市況で変わります。高い数字を出した会社が一番良い会社とは限らない、ということです。
今日できることを、順番に
いきなり売る・貸すを決める必要はありません。上から順に確認していけば十分です。
- 名義を確認する — 登記簿上の所有者が誰になっているかを見ます。亡くなった方の名義のままなら、期限がすでに動いています
- 家の状態を見に行く — 屋根、外壁、塀、庭木。写真を撮っておくと後で役に立ちます
- 役所からの通知がないか確認する — 届いているなら、何段階目かを確認してください。助言・指導なら、まだ手前です
- 火災保険の状況を確認する — 空き家になったことを保険会社に伝えているかどうか
- 課税明細書を見る — 土地と建物、それぞれの課税標準額を確認しておくと、特例が外れた場合の影響を自分で試算できます
- 方向性を決める — 決められなくても構いません。ただし管理だけは始めておくと、後で選べる手が減りません
よくある質問
Q. 空き家というだけで固定資産税は上がりますか。
A. 上がりません。変わるのは、役所から特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けたときです。
Q. 壊して更地にすれば解決しますか。
A. 倒壊や落下の心配はなくなりますが、住宅用地特例は「住宅が建っていること」が条件なので、更地にすると外れます。解体費用もかかります。売るのかどうかを決めてから、解体するかを考える順番をおすすめします。
Q. 遠方に住んでいて通えません。
A. 空き家の管理代行サービスがあります。定期的な換気、通水、外観の確認、写真での報告といった内容が一般的です。費用は事業者や訪問頻度によって変わります。
Q. 兄弟の共有名義で、話が進みません。
A. 共有名義の不動産を売るには、共有者全員の同意が必要です。管理の範囲であれば持分の過半数で決められる行為もあります。具体的にどこまでができるかは、司法書士など専門家に確認してください。
Q. 相続登記をしないまま売れますか。
A. 亡くなった方の名義のままでは、買主に所有権を移せません。売却の前提として相続登記が必要になります。
この記事のまとめ
長くなったので、覚えて帰っていただきたいことだけ並べます。
- 空き家であること自体では税金は変わらない。変わるのは役所から勧告を受けた時点
- 2023年12月13日施行の改正で、特定空家等の手前の「管理不全空家等」でも勧告の対象になった
- 手続きは助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行の4段階。1段階目のうちに動けば、お金はかからない
- 建物が原因で人に損害を与えた場合、住んでいなくても所有者の責任を問われ得る
- 火災保険は、空き家になった時点で保険会社に確認する
- 相続した家には期限がある。登記の義務(施行日前の相続は2027年3月31日まで)と、売却の控除(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)
- 持っていることと放置していることは違う。 管理を続けていれば、決断を先送りしても選択肢は残る
分からない言葉が出てきたら、そこで止まって調べるのが結局いちばん早いです。この記事がその代わりになっていれば嬉しいです。
本記事の内容は2026年9月時点のものです。法令および税制は改正される場合があります。最新の情報は各社の公式サイトにてご確認ください。個別の事情により結果は異なります。